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“税界”の裏話 会計事務所の相続ビジネスの勝者はダレ!?

相続税が増税となり、高齢者や富裕層をターゲットにしたビジネスが盛んになっている。会計事務所業界も言わずもがな、“相続”はビジネス的にも感心の高いテーマだが、大手会計事務所や専門特化事務所も、まだマーケットを押さえ切れていないのが現状だ。

相続税の課税対象者が増えたことで、多くの会計事務所が相続税ビジネスに力を入れだした。課税対象者が増えたことで、税理士に相続税の申告等を依頼する人は増えることが容易に考えられる。ただ、申告件数が増えても、報酬まで払って、会計事務所に仕事を依頼する人は増えるのか、個人的には疑問の目で見ていた。つまり、「ある程度報酬をいただけるお客は少ないのではないか?」との懸念材料があった。

ところが、相続ビジネスに力を入れている会計人と話をしていると、相続税の申告依頼件数が増え、「昨年の何割増しになった」「すでに昨年の件数を超えた」など、景気の良い話を聞く。それも、「この数年にしては、高額報酬の依頼も少なくない」と言うので、相続は会計人にとって、やはり力を入れて取り掛かるに値するマーケットということのようだ。
相続税の申告件数(国税庁発表)を見ていくと、結構面白いことが分かる。平成27年分(平成27年1月1日から同年12月31日)の相続税の課税対象者は、全国で10万3043人。前年分が5万6239人だったので約180%の伸び率だ。

これは、相続税の増税の適用が平成27年1月1日以後の相続からとなっていることに影響する。

相続税の課税ラインの見直しのポイントは、

改正前:5000万円+1000万円×法定相続人の数
改正後:3000万円+600万円×法定相続人の数

となり、基礎控除が6割に縮小されたこと。

基礎控除は、相続税の申告が必要になるかどうかのボーダーライン。遺産が基礎控除以下の場合には、相続税の申告は必要がないが、遺産が基礎控除を超える場合には、相続税の申告が必要になる。

会計事務所にとっての相続税ビジネスを考えたとき、まず浮かぶのが申告業務だ。この申告件数は、10万3043人と急増したわけだが、実は、相続に特化した会計事務所でも、まだこのマーケットでの専有率は1%程度なのだ。

会計人業界はもちろん、世間的にもよく知られている相続特化事務所のひとつに、税理士法人レガシィ(東京・千代田区)がある。広告およびマスコミでの露出度を見ても、他の会計事務所を圧倒しているが、ホームページで紹介されている相続税申告件数を見てみると、平成27年で1181件、有料相談件数429件と、相続絡みの仕事で年間1610件も取り組んでいる。一般の会計事務所ですと、年間5件以下というのが平均的なので、この数字は驚異的だ。

ただそのレガシィといえども、全国で見てみると、申告件数の専有割合は約1.1%に過ぎない。そう見ると、会計事務所にとって相続マーケットは、まだ大手事務所に独占されている市場ではなく、地元の税理士が頑張っている状況ということが分かる。やり方次第では、十分にビジネス拡大の可能性を秘めているのだ。

都道府県別の相続税申告件数を見てみると、トップは東京で2万4647人、次いで神奈川1万3073人、愛知1万1179人、大阪8734人、埼玉6187人、千葉6128人となっている。

相続税申告件数

ただ、相続マーケットでは、申告に関するニーズはかなり低価格になっている。15万円、20万円でサービスを提供している事務所も出てきており、機械的に相続税の申告を手がける事務所も増えてきた。相談まで手がけると、報酬が高い割には、時間がかかることから、時間的に見ると薄利多売のほうがビジネスとして拡大させやすいという。

著者: 宮口貴志

KaikeiZine編集長

税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。現在は租税研究会の事務局長であり、会計事務所ウオッチャーとしても活動。
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