改正はアメとムチ!?
令和4年度税制改正の国外財産調書及び財産債務調書制度の見直しでは、1)両制度における提出期限の後ろ倒し、2)提出期限後に提出された国外財産調書を提出期限内に提出されたものとみなす措置の緩和、3)財産債務調書における提出義務者の拡充だ。
提出期限の後ろ倒しは、両調書の提出にあたって提出対象者は所得税の確定申告において、所得基準を満たしているかどうかを確認後、財産基準を満たすか否かの確認をするという流れで行うことが多い。そのため実際に所得税の確定申告期限までに保有財産の種類・数量・価額を正確に算出することは時間的な問題から、期限内に提出することが必ずしも容易ではないとの声も少なくない。
このため、改正では、提出期限を3月15日から「6月末」まで3か月以上も延長する措置が取られる。
次に提出期限後に提出された調書を提出期限内に提出されたものとみなす措置の緩和(宥恕規定)に関しては、提出期限後に調書が提出された場合において、その提出が「調査があったことにより更正又は決定があるべきことを予知してされたもの」でないときは、「その財産債務調書は提出期限内に提出されたものとみなす措置」については、その提出が調査通知前にされたものである場合に限り適用される。
一方、財産債務調書に関しては、提出義務者が拡充される。同調書では提出義務の要件はあるものの記載不備や虚偽記載、未提出者に対するペナルティが特段ない。このことから、制度創設の大きな意義である「富裕層の適正な所得税課税」が十分に備わっているとは言えない状況となっているため見直される。実際、制度の創設前の平成25年に財務省が公表したデータでは、提出の必要のある者が36万人程度いるという推計に対して、実際の提出者は4割強の約16万人となっていたことから、制度創設時からその部分については疑問を呈している実務家等もいた。
このようなこともあり、4年度改正ではいよいよ「財産債務調書の提出義務者の拡充」が図られる。
これまで、所得2千万円以下の者はたとえ高額の資産を保有していたとしても財産債務調書制度の調書の提出義務はなかったが、現行の対象者に加えて総資産の価額の合計額が10億円以上の者も追加される。
その他、財産債務調書への記載を運用上省略することができる家庭用財産(現金、美術品等は除く)の取得価額基準をこれまでの100万円から300万円に引き上げる。
適用時期は、宥恕規定のみが令和6年1月1日以後に提出される調書に適用され、その他は令和5年分以後の調書について適用される。
税制改正に伴い国外財産調書等の充実が図られえることから、今後、より一層の適正公平な課税に向けた調査等が行われることだろう。
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