5.解説
- (1)預金口座の帰属について
預金の債権者が誰かの問題については、主観説(預入行為が人のための預金であることを表示しない限り、その者の預金とみる見解)、客観説(自らの出捐により、自己の預金とする意思で、自ら又は使者・代理人を通じて預金契約をした者が預金者であるとする見解)、折衷説(原則として客観説に立ちながら、例外的に預金行為者が自己を預金者であると表示した場合には、預金行為者が預金者になるとする見解)がある[1]。判例は、定期預金については客観説を採用していたが、普通預金については2つの最高裁判決[2]があり、そこでは、客観説は明示されず、事実関係から、預入行為者、名義人及び管理人である者(両事案においても同一の者)に帰属するという判断が示された。
本件において審判所は、非嫡出子である請求人の母Lが、毎年、請求人名義口座へ自ら入金していた事実を重視したものと思われる。上記4(2)のとおり、Lは、未成年である請求人の法定代理人として、Gからの贈与証による贈与の申込みを受諾し、その結果、平成13年から平成24年に至るまで、当該贈与契約に基づき、その履行として、毎年一定の金員が入金されていたと認定したのである[3]。
- (2)相続開始前3年以内に被相続人から贈与を受けた財産について
被相続人が相続開始間際に行った贈与には、ある程度死後のことを考慮して財産を分割し、相続税の負担の軽減を図ることを目的とするものもあると考えられる[4]ことから、相続又は遺贈により財産を取得した者がその相続開始前3年以内に贈与を受けたものをその者の相続税の課税価格に加算することとされている(相法19)。
[1] 大橋寛明『時の判例』(ジュリストNo.1262 2004.2.15)142頁。
[2] 最高裁平成15年2月21日二小判決(平成11年(受)第1172号・民集57巻2号95頁)及び最高裁平成15年6月12日一小判決(平成13年(行ヒ)第274号・民集57巻6号563頁)
[3] なお、本件では、本件金員の相続財産該当性も争われている。こちらについては、①Jは相続税の調査まで贈与証の存在を認識していなかった、②毎年Gから電話で贈与の申込みがあったというJの陳述は信用できない等の理由から、JがGから贈与を受けた時期は、本件金員を受け取った平成27年であり、その結果本件金員は相続財産に含まれるという判断が示された。
[4] 令和3年版「図解相続税・贈与税」(大蔵財務協会)102頁。
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