自動車を所有していれば、ゴールデンウィークを過ぎるころに自動車税(自動車税種別割)の納税通知書が届く。自動車税の納付期限は、ほとんどの都道府県が5月31日で、これを過ぎると延滞税がかかる。それに、13年超クルマを乗り続けていると、自動車税が高くなる。何故なのか?愛車を大事に長期間乗っていると注意が必要だ。
自動車税は、トヨタ自動車が創業した1937年(昭和12年)に、揮発油およびアルコール混用法が公布され、揮発油税(ガソリン税)が創設されたことから始まる。そして、1940年に消費税の前のモノに掛かる税金として物品税法(物品税は1989年4月の消費税導入にともにはい廃止)が制定され、乗用車も課税対象に指定された。
現在、自動車税の標準税率は、自家用、事業用、特殊な用途(8ナンバー)等ごとに、総排気量・最大積載量等によって定められている。「1リットル以下」より500㏄刻みで段階的に課税額が高くなり、「1リットル超~1.5リットル以下」「1.5リットル超~2リットル以下」とアップし、最終的には「6リットル超」という区分になる。事業用や8ナンバー車(キャンピングカーを除く)は低額な税額だが、自家用は高額に設定。最高税額は自家用(6リッター超)の11万1千円/年で、新車登録から13年が経過した自動車は、おおむね15%の加重措置(2015年度以降)が設けられている。この場合、最高額で12万7650円/年を納付することになる。
各自治体では自動車税についてホームページなどで解説しており、東京都主税でも自動車税の減免措置など含め詳細に説明している。
古い自動車はなぜ加重措置の対象なのか
自動車に関わる税制は複雑で、素人には細か過ぎて理解するだけで大変だ。そのため、ここでは詳細な説明は省くが、多くの人は自治体から納付書が送られてきて、納税額だけ頭に入っている人が多いのではないか。
そもそも、古い自動車に加重措置が設けられたのは、グリーン化税制により環境に配慮している自動車かどうかが分かれ目になる。環境省の資料「重課に係る論点について」では、「地球温暖化対策と大気汚染対策を目的」であることが示されている。
古い自動車は最近の自動車と比較して環境負荷が大きいため、古い自動車ユーザーがより多くの税金を負担するという理屈だ。
要は、新車の車検が3年、その後は2年ごとになるため6回車検を通したら「買い替えろ」ということらしい。
15%の加重措置は、正確にいえば、ガソリン車とLPG車は13年超、ディーゼル車は11年超が経過したら掛かる。軽自動車では13年超の場合に軽自動車税がおおむね20%重課される。また、自動車重量税にも重課措置がある。
個人的には、長く自動車を乗り続けることは、廃棄処分でゴミを出さないのだから、かえって「持続可能な開発目標(SDGs)」とも言えなくないと感じているが、なぜ13年超に加重措置と言う税のペナルティーを与えるのか?
環境省の資料によると、JC08モード(1リットルの燃料で何キロメートル走行できるかをいくつかの自動車の走行パターンから測定する燃費測定方法の一つ)を基準とした新車平均燃費は2018年時点で22km/Lだが、13年前の2005年には14km/Lと、57%もの燃費改善が行われている。
環境省では、これらのデータをもとに、2000年に新車を購入し2025年までクルマを利用するユーザーAとBが、Aは重課措置を避けて2013年時点で新車に買い替え、Bは25年まで同じ自動車に乗り続けたときのCO2の排出量に関するあるシミュレーションを行った。
AとBは2000年に自動車を購入、国土交通省公表値をもとに燃費を12.5km/L、2013年にAが新車に買い替えた燃費を20.5km/L、年間走行距離は1万kmで計算している。また、このシミュレーションでは、Aが新車に買い替える製造時のCO2排出量についても想定しており、新車の購入年には4.1tのCO2が排出されるとしている。
これらを前提にシミュレーションをすると、AとBのCO2排出量は2012年までは同じだが、2013年にAが新車に買い換えると一時的にAのCO2排出量が大きくなるものの、2018年を境にAとBは逆転し、2025年時点ではAのCO”排出量が46.472t、Bが51.616tと、約10%の差が生じることが分かった。
この結果から「地球温暖化対策と大気汚染対策」のためにCO2排出量の削減を目指す目的から、古い自動車に重課措置を設けるという根拠になっている。
現在では、排出ガス性能や燃費性能に応じて自動車税や軽自動車税が軽減される。例えば、電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)、プラグインハイブリッド車(PHV)などであればおおむね75%軽減される。つまり、自動車税に関しては加重措置という「ムチ」と軽減措置という「アメ」をうまく使い分けているのだ。
古い自動車は、最近の車と比べ物で、CO2排出量が多いことを考えると、15%の加重措置もやむを得ないのかもしれない。だからこそ、長く愛車を維持しようと思うなら、このぐらいの「ムチ」を受け入れていくのも、地球環境への配慮として当然の義務だと承知している。
それにしても、英国や独国、米国などの欧米諸国と比べ、日本の自動車税の標準税率は跳び抜けて高い。その部分はなんとも釈然としないのは、私一人ではないと思う。
*図表はすべて環境省の【資料2-1】「重課に係る論点について」より
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