大手監査法人からのクライアント流出が続くなか、4大監査法人に次ぐ規模の準大手監査法人が業績を伸ばしています。
今回は、監査業界で年々存在感を増している準大手監査法人のランキングを見ていきます。

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2022年度 4大監査法人ランキング(前編)

2022年度 4大監査法人ランキング(後編)

2022年版 4大監査法人決算分析 有限責任監査法人トーマツ

2022年版 4大監査法人決算分析 有限責任あずさ監査法人

 

準大手監査法人とは

公認会計士・監査審査会による「令和3年版 モニタリングレポート」(*1)では、仰星監査法人(以下 仰星)、三優監査法人(同 三優)、太陽有限責任監査法人(同 太陽)、東陽監査法人(同 東陽)およびPwC京都監査法人(同 京都)の5つを準大手監査法人としています。
当記事ではこのレポートの定義に基づき、上記の5法人を分析の対象としています。
また分析にあたっては、各法人の2021年度「業務及び財産の状況に関する説明書類」(*2~6)を参照しています。

1. 業績ランキング

まずは業務収入、いわゆる売上高を見ていきます。
1位は130億989万円を記録した太陽で、他法人を大きく引き離しています。
2位京都は61億8785万円となっていますが、首位太陽の半分以下とかなりの差がついています。
以下、3位の東陽が44億7214万円、4位仰星が38億8251万円、5位三優が35億9189万円となっています。

太陽は準大手として唯一、業務収入が100億円を超え、他法人の倍以上の収入規模となっており、準大手監査法人の中では頭一つ抜けています。

なお大手監査法人で最も規模の小さいPwCあらた有限責任監査法人(以下 あらた)の業務収入は548億5600万円となっています(2021年6月期)(*7)。
あらたの売上規模は準大手首位である太陽の4倍以上であり、大手と準大手の間には大きな差があることが分かります。

続いて監査証明に関する業務収入を見ていきます。

全体の収入と順位は変わらず、1位太陽123億7736万円、2位京都56億541万円、3位東陽43億8120万円、4位仰星36億4551万円、そして5位三優32億7910万円となっています。
太陽は監査収入で他法人に大きな差をつけており、これが全体の業務収入のランキングに影響しています。
各法人の収入全体に占める監査業務の割合は9割以上とほとんどを占めており、準大手監査法人における太陽の大きなプレゼンスは、他法人よりもはるかに大きい監査収入によるものと言えます。

業績の最後に非監査証明に関する業務収入を見ていきます。

1位は6億3252万円の太陽、2位は5億8243万円の京都で順位は変わりませんが、その差は5000万円程度であり、監査収入に比べると僅かな差となっています。
京都に続くのが業務収入5位の三優で3億1278万円、以下、4位仰星が2億3700万円、5位東陽が9093万円となっています。

非監査収入では京都、三優の強さと、1億円にも満たない東陽の存在が目立ちます。
あらたと同じくPwCと提携する京都、そしてBIG4に次ぐ規模の国際会計事務所であるBDOと提携する三優は収入に占める非監査割合が高くなっており、もともとの法人の方針等に加えて提携先からの影響もあるのかもしれません。
一方、5位にとどまる東陽の非監査割合は2%と極めて少なく、ほとんど監査に特化した監査法人といえるでしょう。

準大手への就職や転職を検討する際、集中的に監査を経験したいのか、あるいはコンサルティング等幅広い経験を積みたいのか、監査業務と非監査業務の割合は法人選びの一つの目安になるかもしれません。

2. クライアント数ランキング

次に各法人のクライアントの数を見ていきます。
1位は太陽で1431社、2位は京都で437社、そして3位東陽369社、4位仰星368社と続き、最後に三優が344社となっています。
順序としては業務収入と変わらず、一強の太陽とそれを追う各社という構図になっています。

続いて監査業務のクライアント数を見ていきます。

こちらもクライアント数全体の順位と同じく1位が太陽で1019社、2位が京都で307社、そして3位東陽303社、4位仰星257社と続き、最後に三優が221社となっています。
業績ランキングで見たのと同様、監査クライアント数でも太陽が大きくリードしており、それが全体のクライアント数につながっています。

なお、クライアントのうち大会社等については、京都が65社と最も少ないのが目につきます。

クライアント数の最後に非監査を見ていきます。

非監査クライアント数は、ここでも太陽が他を圧倒し412社で1位、京都が130社で2位、以降、123社の三優が3位、111社で仰星が4位、そして66社の東陽が5位となっています。

大会社等の数を見ると京都は16社、三優は7社にとどまり、非監査クライアントに占める割合はそれぞれ12%と6%にとどまります。
一方でクライアント数こそ最も少ない東陽は大会社等19社に対して非監査サービスを提供しており、その割合は29%と高い値になっています。