3 総括
所得税法では、国内において行う人的役務の提供事業で、「科学技術、経営管理その他の分野に関する専門的知識又は特別の技能を有する者の当該知識又は技能を活用して行う役務の提供を主たる内容とする事業」の対価は国内源泉所得に当たるとしています。
よって、今回の事例のように、日本国外で提供を受けた役務の提供に対する対価は、所得税法上は国内源泉所得に当たらず、源泉徴収は不要となります。
ただし、インド法人に支払う対価が日印租税条約でいう「技術上の役務に対する料金」に該当する場合には、同条約が所得源泉地の判断において「債務者主義」を採用しているため、日本法人が支払う対価は、役務提供を受けた場所が国外であっても日本の国内源泉所得となり、源泉徴収が必要となります。
これは、所得税法と租税条約の源泉地に関する規定が異なる場合には、所得税法の源泉地を租税条約の規定に置き換えることとされているためです。
また、支払の内容が「技術上の役務に対する料金」に該当するかどうかが問題となることもあります。
今回の事例のような医薬物質の研究業務等の他にも、ソフトウェアの開発などをインド法人に委託するケースも見られます。
印租税条約第12条第4項では、「技術上の役務に対する料金」の定義について、「技術者その他の人員によって提供される役務を含む経営的若しくは技術的性質の役務又はコンサルタントの役務の対価としての全ての支払金をいう」と網羅的な規定となっています。
そのため、ソフトウェアの開発委託などについても、技術的性質の役務として源泉徴収の対象になるものと考えられます。
インド法人に対する支払は、源泉徴収漏れが多いことから、インド法人に対する多額の支払いがある場合には、税務調査の対象なることが多いようです。
インド法人に対する支払いがあるか否かは、国外送金等調書を分析することによっても把握することができます。インド法人に対する支払があるにも関わらず、源泉所得税の納付事績が確認できない場合には、調査のターゲットとなる可能性が高くなると思われます。
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