「確定申告書等作成コーナー」を利用した上場株式等の譲渡所得の申告方法
具体的に、上場株式等の譲渡所得を確定申告する手順を以下で見ていきましょう。
1.上場株式等の譲渡所得の計算方法
(1)上場株式等の譲渡所得の計算方法
- 総収入金額(譲渡価額)-必要経費(取得費+委託手数料等)=上場株式等に係る譲渡所得等の金額
■上場株式等の譲渡所得の計算方法
(2)取得費
- 株式等を取得したときに支払った払込代金や購入代金
- 購入手数料(消費税含む)
- 購入時の名義書換料
■上場株式等の取得価額の確認方法
(画像:国税庁「上場株式等の取得価額の確認方法」)
(3)委託手数料等
- 譲渡のために要した委託手数料(消費税含む)
- 株式等の購入に係る売却した年に支払うべき借入金利子
※PC購入代金や通信費、新聞や株の指南書購入代金などは経費としては認められません。
2.「確定申告書等作成コーナー」を利用するのに必要なもの
確定申告には、国税庁が公開している「確定申告書等作成コーナー」を利用するのが便利です。
- インターネットにつながったPCかスマートフォン
- 特定口座年間取引報告書か株式等の取引明細
- 給与所得がある場合は給与所得の源泉徴収票
- 年金がある場合は公的年金等の源泉徴収票
- 各種控除資料 など
3.「確定申告書等作成コーナー」を利用して確定申告する手順
(1)サイトにアクセスし、「作成開始」を選択する
(画像:国税庁「確定申告書等作成コーナー」を元に筆者作成)
今回はPC版の「確定申告書等作成コーナー」を例にとって解説を行いますが、「確定申告書等作成コーナー」はスマホ用WEBブラウザからでもアクセスでき(iOSはSafari、AndroidはChromeのみ)、スマホで申告書を作成することも可能です。
(画像:国税庁「確定申告書等作成コーナー」)
(2)申告方法を選択する
(画像:国税庁「確定申告書等作成コーナー」)
マイナンバーカード対応のスマホを利用して簡単に電子申告(e-Tax)できるようになりました。
申告書を作成し、プリントアウトして税務署に持参することもできます。
(3)令和4年分の申告書等の作成を選び、所得税を選ぶ
(画像:国税庁「確定申告書等作成コーナー」を元に筆者作成)
(4)生年月日を入力し、「給与以外に申告する収入がありますか」に「はい」を選択する
(画像:国税庁「確定申告書等作成コーナー」を元に筆者作成)
(5)「収入金額、所得金額の入力」で「分離課税の所得」→「株式等の譲渡所得等」を選択
(画像:国税庁「確定申告書等作成コーナー」を元に筆者作成)
(6)配当所得の課税方法の選択
「配当所得課税方法の選択」で、「総合課税」「申告分離課税」「配当等がない」を選択します。
原則として源泉徴収されているために申告義務はなく、「配当等がない」を選択して問題がありません。
上場株式等の譲渡所得が赤字の場合は、申告することで配当所得と損益通算され、源泉徴収されていた分が戻ってくることがあります。
詳しくは、「2023年版確定申告 上場株式の配当金って確定申告した方がいいの?」をご覧ください。
(画像:国税庁「確定申告書等作成コーナー」を元に筆者作成)
(7)―1 特定口座の取引内容を申告する人:株式等の売却・配当・利子等の入力で「『特定口座年間取引報告書』の内容を入力する」を選択する
特定口座を保有しているが源泉徴収なしにしている、特定口座内で通算しきれない損失が出た場合などはここで入力していきます。
(画像:国税庁「確定申告書等作成コーナー」)
※データで交付された特定口座年間取引報告書の入力を行う場合は、「データで交付された特定口座年間取引報告書の入力」ボタンをクリック。
(画像:国税庁「確定申告書等作成コーナー」を元に筆者作成)
①書面で交付された特定口座年間取引報告書の入力を行う場合は、「書面で交付された特定口座年間取引報告書の入力」ボタンをクリック。
②申告する特定口座年間取引報告書の「口座の種類」を選択。
特定口座年間取引報告書の右上の「源泉徴収の選択」を確認し、「1有」又は「2無」を選択。
③特定口座年間取引報告書に記載されている「勘定の種類」を選択。
④この源泉徴収口座について申告するものを選択。(選択すると入力項目が表示される)
⑤において「譲渡損益」を選択すると表示されるので、「譲渡にかかる年間取引損益及び源泉徴収税額等」を入力。
0円の場合は「0」と入力。
(7)―2 特定口座以外で上場株式等の売却がある人:株式等の売却・配当・利子等の入力で「株式等の『取引明細』などの内容を入力する」を選択
「特定口座(源泉徴収あり・源泉徴収ない)以外で上場株式等の売却がある。」にチェックを入れ、「株式等の『取引明細』などの内容を入力する」を選択します。
(画像:国税庁「確定申告書等作成コーナー」を元に筆者作成)
一般口座内での損益はここで入力していきます。
(画像:国税庁「確定申告書等作成コーナー」)
①金融商品取引業者ごとに「数量」、「譲渡による収入金額」、「取得費(取得価額)」及び「譲渡のための委託手数料」の合計等を入力。
なお、譲渡した株式等の銘柄を2回以上にわたって取得している場合は、「取得年月日」に最も新しい取得年月日を入力し、チェックボックスにチェック。
②「入力終了(次へ)>」ボタンをクリック。
(7)―3 令和3年分の申告で上場株式等に係る譲渡損失の金額を繰り越した人:「『繰り越された譲渡損失』を入力する」を選択
「令和3年分の申告で上場株式等に係る譲渡損失の金額を繰り越した方」で「はい」を選択し、「『繰り越された譲渡損失』を入力する」をクリックします。
(画像:国税庁「確定申告書等作成コーナー」)
「金融・証券税制(前年から繰り越された損失額)」を、「令和4年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)」の控えなどをもとに入力していきます。
(画像:国税庁「確定申告書等作成コーナー」)
(8)その他の所得を入力
給与や雑所得などがある場合、すべての所得をここで入力していきます。年末調整が済んでいる方でも、改めて給与所得の申告をする必要があります。
(画像:国税庁「確定申告書等作成コーナー」)
(9)所得控除があれば入力する
ふるさと納税があれば「寄付金控除」、年間に自分で負担した医療費が10万円超なら「医療費控除」など、ここで入力していきます。
(画像:国税庁「確定申告書等作成コーナー」)
(10)税額控除があれば入力する
対象となる税額控除があり入力が終わっていないようでしたら、ここで入力していきます。
(画像:国税庁「確定申告書等作成コーナー」)
(11)計算結果が表示されます
納付または還付の金額がここで表示されます。
(画像:国税庁「確定申告書等作成コーナー」を元に筆者作成)
(12)譲渡損が出ている場合、住民税等入力で「申告不要としますか?」に「いいえ」を選択
(画像:国税庁「確定申告書等作成コーナー」を元に筆者作成)
(画像:国税庁「確定申告書等作成コーナー」を元に筆者作成)
(13)住所・氏名等を入力していきます
(画像:国税庁「確定申告書等作成コーナー」を元に筆者作成)
(14)作成した確定申告書類をe-Taxで提出またはプリントアウトし税務署に郵送/持参する
ここで作成した確定申告書類を最初に選んだ方式で税務署に提出します。
まとめ
国税庁が提供する「確定申告書等作成コーナー」を利用すれば、数値を入力すればあとは自動計算してくれるため、申告書の作成が手書きに比べ簡単になりました。
申告書だけでなく、
- 株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書
- 確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)
といった各種付表も作成できます。
確定申告のハードルは昔に比べ大幅に下がっているので、申告義務がある人はもちろん、申告した方が得になるような人は、ぜひ挑戦してみてください。
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