カミュの『ペスト』
新型コロナウイルス感染症は全世界にその脅威をまき散らし、まさに、パンデミックが発生しています。令和2年10月18日22時現在で、全世界に約3967万人の感染者がおり、約111万人の死亡者が確認されています。
このようなパンデミックが、人類の歴史において、しばしば人類の存続をも脅威にさらしてきたことは周知のとおりですが、そうした背景の下、文学においても、パンデミックを取り上げた著名な作品が残されてきました。
その代表的な作品として、アルベール・カミュ(Albert Camus)の代表作『ペスト』をあげることができましょう。
これは、アルジェリアのオラン市で発生したペスト禍を題材とした作品ですが、主人公で医師のリウーと彼を取り巻く人々がペストの脅威にどうさらされたかという市民の姿が描かれた長編小説です。人間性を阻む不条理を描くカミュにとって、代表作『異邦人』と双峰をなす作品であるといってもよいと思います(『ペスト』の中でも『異邦人』が出てきており、クロスリファレンスが図れているところもあります。)。
さて、登場人物の中に、新聞記者のランベールという男が登場します。彼は、そもそも、オラン市の住民ではなく、たまたまオラン市に居合わせただけであったのに、ロックアウトになってしまったがために市から外にでることができなくなってしまったのですが、つい最近出会ったばかりのパリに住む恋人に会いたくて市から脱出したいという男です。
そして、自殺未遂をしたコタールという犯罪者と知り合うのですが、ランベールはコタールの口利きで、市外への逃亡を図れるかもしれないというところまで漕ぎつくという話が展開されています。
その中で、ランベールとコタールが、町の頂上に通じる、木陰のない大きな通りの坂道を登っていくと、税関署にたどり着いたというシーンがあります。この税関署には、市外に出たい人や、市外に住む家族などとの面会を望む人たちが集まっており、税関署の表門の前には、「許されるはずのない面会に望みをかけて、あるいは結局1時間かそこいらで無効になってしまう情報を求めて」やってきた人々の人溜まりができていました。
当時、死亡者の墓や病院が圧倒的に足りなくなっていたのですが、そのような中で、この税関署は、庁舎の一部が、ペスト罹患者の病床に改造されていたのです。税務大学校が、コロナ禍において健康観察期間中の臨時施設とされていたのと同様、小説『ペスト』においても、税務行政組織が病床に利用されていたのですね。
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