4.審判所の判断
(1)法令解釈
消費税法基本通達11-2-20は、個別対応方式により仕入れに係る消費税額を計算する場合の用途区分の判定は、課税仕入れを行った日の状況により行うこととなる旨を定めており、当該取扱いは、消費税法第30条が「要するもの」と規定し、「要したもの」とは規定していないことからみて相当と認められる。
そして、用途区分の判定に当たっては、課税仕入れを行った日の状況等に基づき、当該課税仕入れをした事業者が有する目的、意図等諸般の事情を勘案し、当該事業者において行う将来の多様な取引のうちどのような取引に要するものであるのかを客観的に判断すると解するのが相当である。
(2)検討
請求人は、医師の処方箋に基づいて販売するだけではなく、他の薬局からの都度の要請という仕入れ後の事情により、一定数は必ず当該他の薬局へ販売する状況にあったと認められるのであり、請求人が調剤問屋仕入れを行った日の状況としては、将来、その他の資産の譲渡等のみに要するとはいえず、仕入れ後の事情により、課税資産の譲渡等に要することも予定されていたと認められるから、調剤問屋仕入れについては、非課税売上対応分にも課税売上対応分にも該当せず、よって、共通売上対応分に区分するのが相当である。したがって、調剤問屋仕入れを共通売上対応分に区分せず、非課税売上対応分に区分して控除対象仕入税額を計算したことは、通則法第23条第1項第1号に規定する「国税に関する法律の規定に従っていなかったこと」に該当する。
5.解説
売上のほとんどが消費税の非課税売上と思われる調剤薬局にとって、調剤問屋仕入れに係る消費税はそのまま仕入れのコストとなる。したがって、その一部が消費税の仕入税額として控除できるか否かは、調剤薬局の経営に直結する問題であろう。審判所は、請求人が、日常的に他の薬局との間で調剤薬品等を融通し合っていた事実を認め、調剤問屋仕入れを行った日の状況としては、客観的に見れば、将来、その他の資産の譲渡等のみに要するとはいえないと判断した。
ところで、本件は、課税仕入れを行った日の状況として、将来それが課税資産の譲渡等に使用されるのか、その他の資産の譲渡等に使用されるのかが分からないケースの落ち着き先として、それらに共通する区分とされたのであるが、納税者の主観的意図として、課税資産の譲渡等にのみ要するものとして取得された居住用賃貸マンションの仕入れに係る消費税の取扱いについて、東京地裁において現在、(同様の事案について)2つの異なる判断が示されている。すなわち、ムゲンエステート社判決(東京地判令和元年10月11日)とエー・ディー・ワークス社判決(東京地判令和2年9月3日)がそれであり、前者では「課税仕入れが行われた日の状況において、販売に供されるとともに、一定の期間、住宅用の賃貸にも供されることから課税資産の譲渡等にのみ要するものとはいえないとして、共通課税仕入れに該当する」とされ、後者では「賃貸料収入が見込まれるからといって全額を差し引けないとする国税の判断は相当性を欠く」と判示されており、両者の結論は真っ向から対立している。両事件ともこの先審級が進んでいくものと予想されるので、各上級審の判断が注目されよう。
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