「プロセスオーナー」の選定と役割

こうした事象の発生を防ぐにはどうしたらよいでしょうか。

第一に、「業務記述書」(JSOX文書)を管理する責任者を明確にする必要があります。この責任者を「プロセスオーナー」と言います。

「業務記述書」(JSOX文書)は、販売プロセス、購買プロセスのように、重要なプロセスが認識されます。各重要プロセスに対応して、プロセスオーナーという責任者がアサインされることで、業務フロー変更時にJSOX文書の変更、必要な機関決定等の社内手続きを漏れなく実施される体制が担保されます。

プロセスオーナーは社内で正式に決定することが必要です。「業務記述書」(JSOX文書)のメンテナンスが必要となるため、実際の業務フローの責任者を選定した方が良いです。購買プロセスであれば購買部門長等が該当します。これにより業務フローの変更権限を有するプロセスの責任者に「業務記述書」(JSOX文書)の変更義務が担当されることで、責任の範囲が明確化されます。

「業務記述書」(JSOX文書)の更新漏れが頻発する会社は業務フローの変更権限を有する責任者と「業務記述書」(JSOX文書)の変更義務者が別となっているケースが多いです。

第二に業務フロー変更を行う責任者に「「業務記述書」(JSOX文書)の変更に厳格な手続きが要求されることを把握しておいてもらう」ことが必要となります。

JSOX導入は監査法人の内部統制監査を受けるまでに数年のトライアル期間を経て本番年度に突入しますので、トライアル期間中にプロセスオーナーに業務フロー変更時に厳格な手続きが要求されることを共有できるかがポイントとなります。

第三に内部統制に不備が検出された場合、どのような結果報告がなされるかを事前にプロセスオーナーに共有することが必要となります。

内部統制に重要な不備が発生した場合、最終的に取締役会に報告されます。どのプロセスで、どのような不備が生じたかが取締役会にされ、監査法人からもディスカッションの議題として提示されます。会社ごとに対応は異なりますが、プロセスオーナーが取締役会に出席を要請され、不備が発生した原因、影響、今後の対応策等について直接説明を求める運用を行っている会社もあります。

プロセスオーナーにとっては気持ちのいい場ではありません。JSOX担当者は、プロセスオーナーへ事前に「重要な不備が検出された場合」に必要となる対応についても十分に説明しておくことが重要です。これによりプロセスオーナーはJSOXの重要性を早期に認識することが可能となります。

まとめ

JSOX導入プロジェクトは「業務記述書」(JSOX文書)を作る等、「作業部分」が目立ちますが、難しさの本質は担当者のみでプロジェクトを完結できず、多くの方からの情報提供、作業協力によってはじめて達成される点にあります。

多くのメンバーの関与が必要となるプロジェクトとなるため、JSOX担当者以外のメンバーの「当事者意識」を十分に高めることができるかがポイントの1つです。

大掛かりなシステム変更等が伴わない限り、業務フローの変更は部長等、業務の責任者権限で実行されることが多いと思います。その時に業務の責任者から「JSOXへの影響はないか?」の一言が出るかどうかがJSOXを安定的に運用できるかどうかの分かれ道となります。

JSOX導入プロジェクトをご担当される方は、プロセスオーナーの早期決定と、プロセスオーナーのタスクを明確化することに注意しながらプロジェクトを進めてください。


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