円安が進行しています。4月末にはついに1ドル=130円を突破しました。このような状況下、外貨預金の米ドルやユーロを売却する人もいるでしょう。ここで生じた為替差益には税金がかかります。確定申告も必要となるので注意しなくてはなりません。
2022年12月21日一部修正
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■外貨預金の為替差益と利息は課税対象
外貨預金で生じた為替差益と預金利息には、所得税と住民税がかかります。ただし、それぞれ所得区分や申告の要否が異なります。
- 為替差益は「雑所得」
為替差益とは、購入した外貨の値上がり益を言います。この逆、つまり外貨の値下がり損は為替差損です。為替差益も為替差損も、所得税や住民税の計算上、雑所得として扱われます。
雑所得は、確定申告が必要です。もし今年、外貨預金で為替差益が生じたなら、年明けに申告と納税を行うことになります。
- 利息は「利子所得」
外貨預金で受け取る利息は、利子所得にあたります。こちらは、20.315%(所得税15.315%、住民税5%)の源泉分離課税の対象となります。確定申告は不要です。
ただし、源泉徴収されるのは国内の金融機関に預けたときだけです。海外の預金口座で受け取る利子は源泉徴収されません。そのため、総合課税で確定申告をすることとなります。
■外貨預金の為替差益を確定申告すべき3つのパターン
「外貨預金で為替差益が生じた」というのは「為替差益を確定したとき」です。運用中つまり「含み益状態」のときは為替差益を確定していません。そのため、申告の対象から外れます。
「為替差益や為替差損を確定した」と言えるのは、次の3つのケースです。
- 外貨預金の外貨を日本円にしたとき
外貨預金で運用している米ドルやユーロを売却して日本円にすると為替差損益が確定します。「売却時の外貨の額-購入時の外貨の額」がプラスなら、為替差益です。
ただし、同一通貨のまま、払い出しや預け入れを行った場合は、為替差損益を認識しません。A銀行でのドル預金をそのまま払い出し、B銀行に預け入れたとしても、為替差損益は生じなかったものとして考えます。
【参考】外貨建預貯金の預入及び払出に係る為替差損益の取扱い(国税庁)
- 外貨を他の外貨に換えたとき
「米ドルでユーロを買った」など、保有していた外貨を別の種類の外貨に換えたときも為替差損益が確定します。「米ドルを売って日本円に換え、この日本円でユーロを買った」と考えるからです。
- 外貨でモノやサービスを購入したとき
保有している外貨で外貨建の商品やサービスを購入することもあるでしょう。このようなときも為替差損益を認識します。
外貨同士の交換と同じく、「いったん保有している外貨を売って日本円に換え、この日本円でモノやサービスを買った」と考えるからです。
■為替差益があっても確定申告しなくていいケース
外貨預金の為替差益を確定したら、原則、確定申告が必要です。しかし、次のいずれかに当てはまるなら、確定申告はいらなくなります。
1.給与所得者や年金生活者で他の所得合計が20万円以下
1つの勤務先でしか働いていない正社員や派遣社員、バイトやパートなど給与所得者の方だと、為替差益の確定申告がいらなくなることがあります。「為替差益の雑所得も含め、給与所得と退職所得以外の年間所得の合計が20万円以下」のときです。もし、他に独立して副業をしているなら、それも含めて所得額が20万円以下かどうかを確認します。
公的年金で生活している人も同様です。源泉徴収される公的年金等の収入額が400万円以下であり、かつ、公的年金等に係る雑所得以外の年間所得の合計が20万円以下なら確定申告はいらなくなります。
ただし、給与所得者でも複数の勤務先から給料をもらっているなら、別の基準で20万円以下かどうかを判断しなくてはなりません。さらに、「20万円以下なら確定申告不要」は所得税だけです。住民税は20万円以下でも申告が必要となります。
【参考】20万円以下は申告不要?住民税で会社にバレる?副業の確定申告Q&A
2.学生や主婦など特に収入のない人の外貨の利益が48万円以下
学生や専業主婦など、特段給料をもらっていない人もいます。このような場合、次の順に計算をした結果、黒字になるのなら確定申告が必要です。
【引用元】確定申告が必要な方(国税庁)
もし外貨預金の為替差益を確定しただけでなく、他にYou Tuberや在宅ワークで稼いでいるのなら、為替差益と稼ぎ分の利益を合わせた上で、判定していきます。