会計事務所の生成AI活用に難しい知識は不要です。ChatGPTの「簡単バイブコーディング」と「myGPT」で、業務に役立つツールの作成や、判断業務の標準化・脱属人化が可能になります。山梨の税理士法人深澤会計事務所の深澤智之代表社員/中央事務所所長が、いますぐ使える生成AI活用法を実例とともにご紹介します。

この記事の目次

税理士法人深澤会計事務所・代表社員の深澤智之氏

深澤智之(税理士法人深澤会計事務所 中央事務所所長)

税理士法人深澤会計事務所の代表社員であり、中央事務所所長。
「バックオフィスをサポートし、その最適解を追求し続け、経営者の強みを最大限発揮できる環境づくりに貢献します」を企業理念に掲げ、時代の変化により、あり方の変わる最適解を常に模索・提案し、バックオフィス業務を効率化することで、経営者が経営に集中できる環境の構築を目指している。

※この連載は、「すべてのスモールビジネスを支える統合型経営プラットフォーム」を掲げるfreeeの協力でお送りしています

弊所は山梨県を拠点としており、インターネットが普及している現在においても、東京などの大都市圏と比較すると、常に最新の情報にリアルタイムでアクセスできる環境にあるとは言い切れません。
そのようななか、昨年よりフリー株式会社様とDX支援を目的とした「freee会計導入プロジェクト」を開始しました。

この取り組みを通じて、フリー株式会社様のサポートメンバーと打ち合わせを重ねるなかで、DXに関する多くの知見や具体的なアイデアを得る機会がありました。
結果として、freee会計の導入そのものにとどまらず、業務全体を俯瞰した効率化や、IT・AIの活用可能性についても多くの情報を得ることができました。

本稿では、そうした経験を踏まえ、「会計事務所でも無理なく、すぐに取り入れられる生成AIの活用方法」について、実例を交えながらご紹介します。

誰でもできる!会計事務所の生成AI活用法

ここ数年、生成AIは急速に普及しています。
インターネットやSNSを見ていると、「神プロンプトはこれだ」「この聞き方をしないとダメだ」といった情報が数多く目に入ります。
しかし実際のところ、会計事務所の業務に生成AIを落とし込もうとすると、

  • どこから手を付ければよいのか分からない
  • 専門知識がないと使いこなせないのではないか
  • そもそも業務と相性が悪いのではないか

と感じている方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、弊所で実際に活用している、誰でも比較的簡単に導入できる方法として、

  1. 簡単バイブコーディング
  2. myGPTの活用

この2点に絞ってご説明します。

1. 簡単バイブコーティング

バイブコーディングとは何か?

バイブコーディングとは、厳密なプログラミング設計や高度な専門知識を前提とせず、「やりたいことを自然言語でAIに伝え、対話しながらコードを作っていく」開発スタイルを指します。
最近では、Claude Code や Antigravity など、AIによる高度なコーディング支援ツールも登場しています。
ただし、これらは環境構築や操作方法に一定のITリテラシーが求められ、会計事務所の日常業務の延長線上で気軽に使うには、ややハードルが高いと感じる方も少なくありません。

一方で、ChatGPTのような定額契約型の生成AIであっても、「何をしたいか」を具体的に伝えるだけで、実務に耐え得るツールを短時間で作成することが可能です。

≪実例:PDFの結合・分解ツールを作ってみる≫

今回は例として、PDFの結合・分解ができるソフトを作成しました。
といっても、行ったことは非常にシンプルで、ChatGPTに対して、

「GUIで複数のPDFファイルをドラッグ&ドロップで選択し、結合および分解できるPythonファイルを作成して。また、ダウンロードできる形で納品して」

と質問しただけです。

すると、1分もたたないうちにダウンロードリンクが表示され、当該機能を持ったPythonファイルが完成しました。
実際にファイルを開くと、直感的な画面でPDFを結合・分割でき、一般的な市販ソフトと何ら遜色ありません。
(※前提としてPythonなどのプログラムをダウンロードしておく必要はあります)

ChatGPTへの指示と回答

簡単な質問だけでプログラムの作成まで行ってくれます。

ChatGPTで生成したPDF結合・分解ソフトの画像

それっぽいソフトが完成しました。実際にPDFの結合・分解を行うことができます。

会計事務所業務への応用

このような感覚で、弊所では、

  • 領収書PDFを自動解析して仕訳データを生成し、freee会計へAPI連携するソフト
  • 消費税区分や課税・非課税の判定を自動チェックするツール

などを作成しています。

弊所で効果が大きかったのは、「毎月繰り返すが、手順が面倒」「人によってミスが出る」領域です。
このような業務を日々の従業員とのコミュニケーションなどにより洗い出しを行い、抽出しています。
初めのうちは生成AIに質問を繰り返してもうまくいかないことが多々ありましたが、試行錯誤を繰り返しながらプログラム作成の精度が上がってきました。

「プログラム」と聞くと難しく感じがちですが、慣れてしまえば、「意外と敷居は高くない」と感じていただけると思います。

2. myGPTの活用

myGPTとは何か

myGPTとは、ChatGPT上で作成できる「特定の目的に特化したAIアシスタント」です。
あらかじめ役割、前提条件、回答ルールを設定しておくことで、毎回一から説明しなくても、一定の品質と方向性で回答を得ることができます。

会計事務所の品質は、突き詰めれば「同じ論点に対して、誰が対応しても同じ結論に近づけるか」です。
特に以下のような業務は資料参照が多く、担当者ごとの差が出やすいと感じます。

  • 固定資産の区分・耐用年数(建物附属設備か器具備品か、細目の判断)
  • 消費税の課税区分(非課税/不課税/免税、簡易課税の対象可否など)
  • 交際費、寄附金、福利厚生費などの判定
  • 年末調整や所得控除の確認(要件・必要書類の整理)

myGPTで「参照資料」と「考え方の順序」を決めてしまえば、若手職員でも一定水準のたたき台を短時間で作れます。
ベテランは、そのたたき台を確認し、例外だけを拾えばよくなります。
結果として、教育コストと確認コストの両方が下がります。
通常のChatGPTとの最大の違いは、“属人性を排除できる点”にあります。

myGPTを活用することで、「調べ方」「考え方」をAIに統一させることが可能となります。

≪実例:勘定科目・耐用年数検討用myGPT≫

弊所では、勘定科目および耐用年数検討用のmyGPTを作成しています。
資産取得時の検討プロセスは、

  1. 資産内容の把握
  2. 勘定科目の定義確認・科目決定
  3. 構造・用途から細目を特定
  4. 耐用年数表による年数決定

と多段階にわたり、その都度、通達や資料を確認する必要があります。

このプロセスをmyGPTに集約することで、工数削減と判断精度の向上を同時に実現しています。
作成手順は大きく以下の3つとなります。

  1. 耐用年数の適用などに関する取扱通達、耐用年数表など、根拠資料をWordなどにまとめて保存する
  2. myGPTにそのファイルを「知識」として添付する
  3. 指示文(運用方針・回答フォーマット)を作る

最初の設定は多少手間がかかりますが、一度作成すれば、特定分野を調べる際に非常に強力なツールとなります。
指示文の作成に一番時間をかけますが、弊所のサンプルは以下のとおりとなります。

【目的】

あなたは、常に最新の情報にアクセスし、最新の法令をアップデートしている会計、税務に精通したとびきり優秀な会計士です。
質問者が、購入した備品などについて質問をするので、法令に準拠し、固定資産として適切に適用すべき、勘定科目、細目、耐用年数、根拠法令、参考文書について回答します。

【事前準備】

①ユーザーの回答に返答する前に知識に添付しているファイルをメモリに記録します。なお、知識にアップロード済みの知識ファイルは次の2ファイルです。

ファイル名 形式

耐用年数の適用等に関する取扱通達 .docx

耐用年数表 .docx

【運用方針】

アップロード済みの2つのファイルはすべて回答に必要な情報となります。

  • 「耐用年数の適用等に関する取扱通達」は税務上の各勘定科目に関する区分を明らかにする国税庁から出ている通達です。
  • 「耐用年数表」は国税庁から出ている、各勘定科目に適用するべき耐用年数を表示しています。
  • 原則としてアップロード済みファイルを根拠として明示し、必要に応じてWebを参照、その場合はその旨を必ず掲示します。

【回答ルール】

  1. アップロードした知識のデータより資産区分(建物/建物附属設備など)や取扱い(例:賃借人の造作の扱いなど)を特定し、細目、耐用年数を「耐用年数表」より特定する。その他根拠となる情報を収集する。
  2. 質問の内容で確定できない場合には、確定させるための根拠を明確にするために必要な情報について必ず再質問する

【回答フォーマット】

  1. 勘定科目:(構築物 等)
  2. 細目等:(広告用のもの/金属造のもの 等)
  3. 耐用年数:(20年 等)
  4. 法令上の根拠:(法令名および法令番号、内容を記載する)
  5. その他補足説明

試しに「事務所で使用する冷蔵庫」と質問すると、以下のような回答となります。

myGPTでの回答

まとめ

  • 簡単バイブコーディングで、現場の面倒をツール化する
  • myGPTで、調べ方と判断の順序を標準化し、属人化を減らす

今回ご紹介したこの2つだけでも、月次業務などの工数は目に見えて削減します。
最初の一歩としては、まず毎月必ず発生する面倒な作業を1つ選び、AIにツールを作らせるところから始めてみてください。
会計事務所の現場で生成AIが生きるのは、地道な改善の積み重ねだと感じています。
以上のとおり、定額契約型の生成AIであっても、使い方次第で会計事務所業務を大きく効率化することが可能です。

弊所では、会計・税務に関する法令や専門知識の蓄積を、専門家としてもっとも重要な価値と位置づけています。
その一方で、業務フローについては従来の方法にとらわれることなく、「より良い方法はないか」を常に考え、改善を重ねています。

人材不足によりバックオフィス業務の負担が増すなかでも、経営者が本来注力すべき経営判断や事業活動に専念できる環境を整えることが、私たちの目指す姿です。
会計の専門知識や最新のテクノロジーを活用し、社会に貢献したいという想いを持つメンバーを、私たちは常に歓迎しています。

税理士法人深澤会計事務所
https://www.f-tax-c.jp/

●所在地
中央事務所
〒400-0032
山梨県甲府市中央3-11-30

北口事務所
〒400-0016
山梨県甲府市武田2-2-5

 

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