2024年の税理士業界をは、はインボイス制度の導入から約1年が経過し、電子帳簿保存法が完全義務化されました。また引き続き、税理士法人の数は増えています。2024年に行われた調査の数字とともに、今年の税理士業界のトピックを振り返ります。
2024年はインボイス制度の本格導入と電子帳簿保存法の完全義務化により、支援すべき顧客だけでなく税理士・会計事務所にも大きな影響がありました。
また、税理士法人の数は増加を続け、業界の競争激化と組織再編が進んでいます。
この記事では各調査の結果を見ながら、数字とともに2024年の税理士業界のトピックを振り返ってみます。
インボイス制度の本格導入
2023年10月にインボイス制度が導入され、1年以上が経過しました。
導入前から物議を醸していたこともあり、2024年には導入後についてのさまざまな調査が実施されました。
物議を醸していた要因のひとつが、導入により増える事務負担でした。
導入後の事務負担について、「課税事業者(適格請求書発行事業者)」「企業の経理担当者」「記帳代行やインボイスのサポートを行う会計事務所」に聞いた調査の結果を並べ、それぞれにどのような影響があったかを見てみましょう。
インボイス制度の導入で最も影響を受けるといわれていたのが、課税事業者(適格請求書発行事業者)にならないと取引や報酬が減る可能性がある、売上1,000万円以下の免税事業者(主に小規模事業者や個人事業主)でした。
全国商工団体連合会(全商連)付属・中小商工業研究所が行った調査(2024年2~3月に628人に実施、複数回答可)によると、「インボイス発行事業者になったことで、どのような影響が出ていますか?」という問いに対して、年間の売上高1,000万円以下のインボイス発行事業者(課税業者)の52.9%が「経理や記帳など実務が増えた」と回答したとのこと。
また、Sansan株式会社が企業の経理担当者に行った調査(2024年8月に経理担当者1,000名に実施)によると、「現在、インボイス制度対応について課題を感じていますか」との問いに対し、71.0%が「課題を感じている」と答えています。
回答者にさらに課題の内容を聞いた結果(複数回答可)、50.1%が「制度対応に伴う業務負担が増えた」と回答。
適格請求書(インボイス)を発行する側である事業者も、受け取る側である企業の経理担当も、約5割が負担増を実感しているという結果になっています。
それに比べ、会計事務所のほうがより負担を感じているようです。
株式会社ミロク情報サービスが行った調査(2024年8月に全国の249の会計事務所に実施)によると、「インボイス制度後、記帳代行業務の負担は増えましたか?」という問いに対し、「多少増えた」が53%、「大幅に増えた」が32%で、計85%の事務所が負担増を実感しています。
「インボイス制度後、顧問料の値上げを行いましたか?」という問いに対しては、「値上げは行わない」が37%、「値上げを検討したが決まっていない」が31%で、計68%。
「値上げを行った」23%と「値上げを行う予定」の9%を合わせた32%を、大きく上回っています。
多くの会計事務所が、インボイス制度による負担増を感じながら、顧問料の値上げには踏み切れていない実態が見てとれます。
KaikeiZineでは、インボイスと、このあとふれる電子帳簿保存法に関する書籍の紹介記事を掲載しています。
気になるかたはぜひ、こちらも読んでみてください。
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電子帳簿保存法の完全義務化
インボイス制度と並び、電子帳簿保存法の改正も2024年のトピックでした。
2年間の宥恕措置の終了に伴い、2024年1月1日から「電子取引の電子保存」が完全義務化。
多くの企業がデジタル記帳やクラウドツールの導入を迫られることとなり、内部統制の強化に取り組みました。
リコージャパン株式会社が行った調査(2024年5~7月に取引のある全国の中堅中小企業に実施)によると、「電子帳簿保存法に対応できている」と回答した企業は86%と9割に迫る勢いで、完全義務化への対応が進んでいることがわかります。
一方で、電子帳簿保存法の対応により業務が「とても増えた」と回答した企業は41%、「やや増えた」と回答した企業が46%で、計87%が制度対応による業務負荷の増加を感じています。
また、フリー株式会社が税理士と公認会計士に行った調査(2024年2月〜2024年3月に実施、有効回答196件)によると、「電子帳簿保存法対応で業務量が増えた」という問いに対して、「1〜19%増えた」が32.1%、「20〜39%増えた」が15.3%、「40%以上増えた」が4.1%で、計51.5%となっています。
約半数の税理士・会計士が業務量の増加を実感している結果となっています。
電子帳簿保存法の対応により、会計事務所自体のデジタル環境の構築が進んだという見方もあります。
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税理士法人は引き続き増加傾向
2005年に1,000社を突破してから、税理士業界の競争激化や複雑な税務ニーズへの対応を背景に、税理士法人の数は増加の一途をたどっています。
その勢いは2024年でも衰えませんでした。
日本税理士会連合会の調査によれば、2024年3月の時点で全国の税理士法人の本店数は5,002、支店数は2,790。
それが同年11月の調査では、本店数が5,097で「95増」、支店数が2,907で「117増」と、わずか8カ月間でさらに伸びています。
全国の税理士法人数 | 本店 | 支店 |
2024年3月 | 5,002 | 2,790 |
2024年11月 | 5,097 | 2,907 |
増加数 | 95 | 117 |
大規模事務所の優位性が高まる中、専門性の向上でさらなる差別化を図ろうとする税理士法人もあり、税理士業界の組織の規模拡大や再編はしばらく続きそうな気配です。
まとめ
2024年は、インボイス制度や電子帳簿保存法によるクライアントの負担を減らすべく、税理士が活躍した年だったということもできます。
新制度やDXに対応する適応力、複雑な税務ニーズに応えるためのスキルが税理士に求められています。
税理士業界の競争を勝ち抜くため、組織の再編も進んでいくでしょう。
税理士や会計業界のみなさまが活躍できる年になるよう、2025年もKaikeiZineは有益な情報をお届けしていきます。
引き続きのご愛顧を賜りますよう、どうぞよろしくお願いいたします。
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【参考・出典】
https://www.zenshoren.or.jp/2024/05/27/post-31958
https://jp.corp-sansan.com/news/2024/0918.html
https://www.mjs.co.jp/news/news_2024/000000402.000018493/
https://jp.ricoh.com/release/2024/0903_1
https://corp.freee.co.jp/news/accounting_research.html
https://www.nta.go.jp/taxes/zeirishi/zeirishiseido/rengokai/rengou.htm
https://www.nichizeiren.or.jp/cpta/about/enrollment/