4.審判所の判断
(1)H1及びH2は所得税法等に規定する「医薬品」に該当するか否かについて
H1及びH2に含まれているものは、いずれも日本薬局方に収載された成分である。しかしながら、H1及びH2は、製薬会社が健康補助食品として製造販売しており、その製品情報やホームページの製品ガイドの記載は、食品表示法5条及び同条に規定する食品表示基準に基づいて記載されたものと認められ、その製品を服用する対象者についても、○○たい方や○○たい方などとされ、医薬品のような効能効果の記載は認められない。そうすると、H1及びH2は、その使用目的が食用に限定されているものである。
(2)本件漢方等の購入対価が「治療又は療養に必要な医薬品の購入」の対価であるといえるか否かについて
H3及びH4は、医薬品ではあるものの、医師の処方せんがなくても薬局等で購入可能なものであり、また、その効能効果は滋養強壮であり、一般的に疲労回復や健康維持のために用いられるものであるが、M3医師は、請求人母に対し、市販の医薬品や健康食品の服用を患者に指示したり勧めたりするようなことはないと答述していることから、請求人母のH3及びH4の服用は、M3医師の治療に関係して服用されていたものとはいえない。したがって、M3医師の答述からは、H3及びH4が請求人母の「治療又は療養に必要な医薬品」であったとはいえない。
5.解説
(1)医薬品の意義について
所得税法は、「医薬品」の意義について、特段の定義規定を置いていないが、所得税法基本通達73-5は、薬機法2条1項所定の「医薬品」の概念を借用し、「医薬品とは、薬機法2条1項に規定する医薬品をいい、同項に規定する医薬品であっても、疾病の予防又は健康増進のために供されるものの購入の対価は医療費に該当しない」としている。
なお、サプリメントの購入費用について医療費控除該当性が争われた東京高裁平成27年11月26日判決[2]では、医療費控除の対象となる医薬品について、「薬事法(現薬機法)2条1項に該当し、同法の規制の下に厚生労働大臣の承認を受けて製造販売されている医薬品をいう(下線筆者)」との従来の解釈よりやや限定的(下線部分)な判断基準が示されたが、本裁決例では、当該限定解釈を採用していない。
(2)本件漢方等についての審判所の判断
4種類の本件漢方等については、H1及びH2は厚生大臣指定の医薬品ではない、またH3及びH4は薬機法2条1項の医薬品該当するという違いがあったため、請求人は、前者について、①その成分が日本薬局方に収載されている等の主張をし、後者については、②請求人母の治療目的で服用されたこと等を主張したものと思われる。
これに対し審判所は、①の主張について、薬機法の逐条解説を引用し、「日本薬局方に収載されている物は全て医薬品であるが、その使用目的が食品用、化学工業用等に限定される場合には医薬品から除外され、また、ある物が日本薬局方に収載されている物に該当するか否かは、社会通念によって判断すべきである」として、H1及びH2は、その使用目的が食用に限定されているものという判断を下した。また、②の主張について審判所は、M3医師の答述(及び上記では触れていないが、薬剤師による作成書面の記載内容)から、H3及びH4が請求人母の「治療又は療養に必要な医薬品」であったとはいえないと判断した。
[2] 訟月62巻9号1616頁
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