4.審判所の判断

更正の請求が、提出した申告書に係る国税の法定申告期限から5年以内の請求期限を設け(通則法第23条第1項)、その理由等を記載した更正請求書を課税庁に提出すること(同条第3項)を求めていることに鑑みれば、租税法律関係の早期安定及び税務行政の能率的な運営等を図る趣旨から、少なくとも更正請求期限を経過した後においては、更正請求書に記載しなかった事由を当該通知処分の違法事由として新たに主張することは許されないと解すべきである。

更正の請求の対象とされた国税は、平成23年分の所得税であり、その更正請求期限は、通則法第23条第1項の規定により、同年分の所得税の法定申告期限(平成24年3月15日)から5年経過後の平成29年3月15日であるから、請求人が本件審査請求をした平成30年4月6日時点で、平成23年分の所得税に係る更正請求期間が経過していることは明らかである。そうすると、本件審査請求において新たに主張された請求人の顧客48名の収入(本件収入3)に係る事由は、所得税通知処分の違法事由として主張することが許されないというべきである。

5.解説

更正の請求期限を超えて追加的に主張することは許されないと判示した裁判例として、大阪高裁平成26年4月18日判決[2]がある。同判決は、いわゆる後発的事由に基づく更正の請求に対する通知処分の是非が争われたものであり、そこでは、「後発的事由に基づく更正の請求については、限定列挙された事由ごとに短期(2か月)の期間制限を設け(通則法23条2項)、更正の請求に際しその理由等を記載した更正請求書を課税庁に提出することを求めていること(同条3項)に鑑みれば、租税法律関係の早期安定及び税務行政の能率的な運営等を図る趣旨から、既に、ある後発的事由を理由として更正の請求をしているからといって、当該手続内で、当初の更正請求書に記載したのと別個の後発的理由を、当該別個の後発的事由に係る更正請求期限を超えて追加的に主張することは許されない」と判示している。

平成23年の通則法改正により、それまで法定申告期限から1年以内とされていた更正の請求期限が5年に延長された[3]ことに鑑み、納税者は期限内であればいつでも更正の請求をすることができるようになったため、租税法律関係の早期安定の要請はより高まったものといえる。その意味で、上記大阪高裁が示した考え方は、後発的事由に基づく更正の請求のみならず、通常の場合の更正の請求(通則法23条1項)にも同じように適用されるべきとして審判所は捉えたものと解される。


[2] 平成24年(行コ)第135号・税資第264号-74(順号12455)。なお、同高裁判決は、最高裁(第三小法廷)平成27年9月1日決定(平成26年(行ヒ)第329号・税資第265号-135(順号12718)により、上告不受理となり確定している。

[3] 課税庁側の減額更正の期間制限である5年と平仄を合わせるべく改正された。


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