戸籍と所得税

さて、今日の我が国の所得税制は申告納税制度を採用していますから、仮に、このような戸籍のない抗夫がそれなりに高いレベルの所得を得ていたとなれば、ひとり親方として事業所得の申告をしなければならないことになりそうですが、果たして、戸籍のない人に納税義務はあるのでしょうか。

憲法30条において、国民には納税の義務が課されていますが、戸籍のない者を「国民」と解するか否かという問題関心にも接続されましょう。

この点、戸籍の如何を問わず国民であると解されることから、無戸籍であっても納税義務があると理解すべきではありますが、この点に限らず、所得税法は、基本的に戸籍をベースとした課税ルールを構築しています。

例えば、配偶者控除や扶養控除については、民法上の家族観を前提とした解釈がなされていることから、配偶者控除の対象であるかは、戸籍上の配偶者であることが前提となりますし、扶養控除についても認知がなされているか否かで判断がなされます。

このように考えると、戸籍のない者に対する課税問題は必ずしも簡単な問題として片付けることはできそうにありません。

また、こういった無戸籍者については、戸籍制度を前提とするマイナンバー制度でも把握されないことから、そのような人たちに対して租税行政は如何なる対応をすべきかといった問題も発生してきましょう。

さて、我が国の戸籍については、世界で類を見ない制度として賞賛する声もありますが、その裏で、無戸籍者の問題はなかなか正面から取り上げられず解決されてこなかったのが現状です。法制審議会(民法(親子法制)部会)の中間試案によって、民法改正が一歩進んだところと思われますが、民法をベースに構築されている所得税法の解釈についても、変化が生じる可能性は多分にあるでしょう。


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