課税事業者は上記の式で計算するうえで、計算式右側の「払った消費税」を引くためには通常の領収書や請求書等を保存すればよいこととなっています。でもインボイス制度が始まると、今までの領収書等ではなく、『インボイス』というものがないと、「払った消費税」を引けなくなります。

今までの領収書には「この本の代金1千100円受け取りました」とだけ書いてあり、インボイスには「この本の代金1千円と、消費税100円受け取りました。消費税100円もらったのであとで納めます」と書いてあると思ってください。具体的には、インボイスには「登録番号」というものが書いてあるのでそれと分かります。

インボイスを発行した(売った)事業者が、「あとでこの100円納めます」と言ってるので、払った方は、100円をあとで返してもらえるため、上記の式で引くことができるのです。

今までの領収書では、領収書を発行した(売った)事業者が消費税を納めるかどうか分からないけど、それでも払った方は、引くことができました。インボイス制度が始まったら、売った方が消費税を納めないのであれば、買った方がその分も負担することになります。

それなら、買った事業者は、経費を払ったらインボイスが欲しいですよね。普通の領収書じゃ困ります。だから相手(売った事業者)に「インボイスを出してください」と言います。

ここで、誰でもインボイスを発行できるわけではありません。あらかじめ「インボイスを発行する」という登録をした事業者だけが発行できます。そしてこの登録は課税事業者でないとできません。

つまり、免税事業者のままでは、何か売ってもインボイスを発行できません。普通の領収書を渡すことになります。相手は嫌がるでしょう。「なんであなたが負担すべき消費税をこっちが負担しなくちゃいけないの?」税抜価格に値下げしてって言われるかもしれないし、インボイスを発行する事業者に取引を変えると言うかもしれません。今後は、インボイスを発行できないと、事業を続けるのは厳しくなると思います。一部、料理教室やネイルサロンなどのように、一般消費者のみに販売する仕事で、相手からインボイスを発行してと言われることがほぼないものであれば免税事業者のままでも大丈夫かもしれませんが。

そうでない多くの事業者は、あえて課税事業者になって、インボイス発行事業者に登録する必要が出てくるでしょう。

今までもらえていた消費税を、今後は納めなくてはいけなくなるので、損した気分になるかもしれませんが、今まで得していたのが正しくなるだけなのです。

とは言え、あまり売上のない個人事業主とか、副業で少し稼いでるとか…そういう方々もみんな消費税の計算をして申告するとなると大変だろうなと思います。実は消費税の計算には別の方法もあり、とても複雑なので税理士に相談する方がいいのですが、小規模事業者だと税理士に報酬を払うのも厳しいかもしれませんね。

消費税のインボイス制度は令和5年10月1日から始まります(経過措置あり)。そして今年の10月1日から、インボイスを発行するための登録申請の受付が始まります。まだ先の話だと思っているとあっという間です。免税事業者は、今後の対応を考え始めましょう。

 

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