5.解説

所得税は暦年を課税対象期間としているので、収入がどの年に帰属するか、すなわち所得の年度帰属は極めて重要な問題である。会計学では、収入の帰属について、伝統的に、現金主義(Cash Base)と発生主義(Accrual Base)を一種の対立概念として捉えるが、税法の世界においても、借用概念として便宜上この2つの考え方を採用している。所得税法36条1項は、「『収入金額とすべき金額』及び『総収入金額に算入するべき金額』は、別段の定めのあるものを除き、その年において『収入すべき金額』とする」と規定しているので、『収入すべき金額』とは何を指すかが問題となるが、条文上の『収入すべき金額』の用語を『収入すべき(法律上の)権利が確定した金額』と文言を補足することで、いわゆる『権利確定主義』を導き出し、かかる『権利確定主義』を広義の発生主義に含まれるものと整理し、会計学のいう発生主義との整合性を図っている。

裁判例では、「現実の収入がなくても、その収入の原因たる権利が確定的に発生した場合には、その時点で所得の実現があったものとして、上記権利発生の時期の属する年度の課税所得を計算するという建前(いわゆる権利確定主義)を採用しているものと解される(最高裁昭和49年3月8日第二小法廷判決・民集28巻2号186頁参照)」との解釈が示されている。

そして、収入の原因となる権利が確定する時期は、それぞれの権利の特質を考慮し決定されるべきものである(最高裁昭和53年2月24日第二小法廷判決・民集32巻1号43頁参照)から、本件においては、本件損害金については本件判決が確定したとき、本件遅延金については、本件判決確定の日までの部分は本件損害金と同様、それ以降の部分については日々発生していくとの結論が導かれる。


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