■大企業や中堅企業ならカーボンニュートラル投資で赤字を有効利用

カーボンニュートラルへの投資に関する優遇税制として、もう1つあります。「繰越欠損金の控除上限の特例」です。ただしこちらはカーボンニュートラルだけでなく、他の投資も含めて「事業再構築」が条件となります。

コロナ禍で令和2年度・令和3年度に赤字を抱えていながら事業の再構築につながる投資を行うと、欠損金の繰越控除額が100%になります。ただし、無期限・無制限ではありません。繰越できるのは最長で5年間です。また、繰越額も認められた投資額の範囲内となります。カーボンニュートラル向けの投資なら、計画に基づいて行い、経済産業省の認可を受けた金額が上限です。

残念ながら、中小企業はこの繰越欠損金の特例の対象ではありません。この制度を使わなくても、元から欠損金全額を翌期以降に繰越できるからです。対象は、通常50%しか欠損金を繰越できない大企業と中堅企業となります。

■節税は手持ち資金と目的とのバランスで考えよ

3回にわたって令和3年度税制改正における企業向けの優遇税制の内容をお伝えしました。中小企業M&AやDX(デジタルトランスフォーメーション)、カーボンニュートラルといった最近注目のトピックに関するものばかりです。節税効果が高いので「できるものなら活用したい」と感じるかもしれません。けれど無理は禁物です。節税はオマケに過ぎません。背伸びしてまでやるべきものではないのです。

一口に法人といっても事業目的は様々です。DXやカーボンニュートラルはまったく必要のないところもあります。中小企業M&Aにしても、会社によっては他の方法がよいかもしれません。節税のためだけに投資をすると、手持ち現金を減らすだけになってしまいます。

「無理な節税をするよりも税金を払った方が現金は残る」というのが多くの税理士の意見です。制度の活用は、自社の状況や事業目的、資金繰りを鑑みながら検討しましょう。


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