2.社外の専門家から信頼を得られる人材か
常勤監査役は、監査法人との打ち合わせや、上場準備の会社においては、証券会社対応、東証対応等、社外の専門家と対峙することが多くなります。したがって、専門性が必要です。事業、法務、会計のいずれか3分野の専門性があると良いでしょう。万が一、当該3分野のうち、事業に詳しい方で常勤監査役に相応しい方がいるのであれば、異動で配置することを検討しましょう。昔から在籍する社員で、事業に詳しく、会社に対してロイヤリティーが高い方が常勤監査役に就任されることは、社外の専門家からも一定の信頼を得られます。
一方で、様々な専門家と接することになるので、その人間性も問われます。学歴や職歴が立派な方を採用したが、大企業での役職の経験があるだけで実際は実務が全く出来ない、もしくはベンチャー企業に全く適合出来ないケースもあります。そのように監査役としての責務を果たせない場合、監査法人や証券会社から交代するように指摘されることもあります。社外の専門家は様々な企業で常勤監査役と接してきているので、人を見る目はあります。よって、常勤監査役を選任する前に、一度社外の専門家に確認されると適切なアドバイスを得られることもあるでしょう。当然、経営者と社外の専門家の意見が対立することもありますが、社外の専門家は冷静に分析した上で意見を述べられているはずなので、例え厳しい評価が下されたとしても、真摯にその意見に耳を傾けましょう。
3.社員から信頼を得られる人材か
常勤監査役の中には、常勤でありながら、ほとんど会社に来ない監査役もいます。また、会社に来てもおしゃべりやネットをしていて、実際は仕事をしていない方もいます。取締役会や経営会議等の会議体に出席だけし、特に重要な意見も言えないので、形式的に取締役会に出てもらっているようなこともあります。そして、取締役会後の飲み会からだけはりきる常勤監査役もいました。
このような常勤監査役では、経営者はもちろん、一般社員からも信頼を得られません。このような状況を看過している場合、社員に悪影響が出ることもあります。常勤監査役が特に仕事もしていないのに給料は高いと社員が感じてしまうと、一所懸命働いている社員のモチベーションが下がってしまいます。そのような常勤監査役はむしろ会社にとって害になりかねません。したがって、役員にふさわしい、知識・経験・人格が備わっており、経営者からは当然のこと、社員からも信頼を得られる人材を選任しましょう。
以上、IPOを目指して常勤監査役を選任する際に注意すべき3つのことを纏めました。常勤監査役は、経営者や経営陣を監査する立場ですし、IPO等を検討しなければ、普段採用を検討するようなことがない方です。そのため、常勤監査役を選任する必要がある場面に直面すると、良くわからないから何となく選任してしまい、あとで大変な目にあう経営者もいました。
職歴、学歴、資格等も重要ですが、それ以上に重要なことは、「誠実で信頼できる人材」であることです。誠実で信頼できる人材であれば、多少経験や能力が足りなくても、社外の専門家に教えを請いながら業務を推進していくことは可能です。
本記事が、IPOを目指して常勤監査役を選任する経営者の役に立てれば幸いです。
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