5.解説
上記3.①によれば、原処分庁は、「本件契約書や本件基本合意書には開発関連書面が適法かつ有効にK社に移転し取得され承継手続が全て完了している旨記載されている。」と主張しているが、これは契約書上で単に取引の条件を定めているのに過ぎないのであって、明らかな事実誤認である。また、本件覚書により、当事者間で、本件契約書上の義務の履行その他の取引条件が満たされていないことが明らかにされているが、原処分庁側から、この記載内容を否定するような特段の事情も示されていない。以上から、審判所が、収益の計上時期として清算合意書が締結された時期と判断したのは相当である。
なお、原処分庁は、契約が成就しなかったにもかかわらず一定の譲渡代金収入が計上されたことの不自然さから、請求人はK社と通謀して内容虚偽の契約書を作成したとして、契約そのものが仮装隠ぺいに当たると判断し重加算税の賦課決定処分を行っている。しかしながら、原処分庁は、請求人がK社と通謀したとする証拠を示しておらず、本件に重加算税を賦課したことは原処分庁の「勇み足」といわざるを得ない[1]。
[1] 長島弘『譲渡代金の収益計上時期につき納税者の主張が認められた裁決例』税務事例(Vol.52 No.11)24頁は、「通謀を示す明確な根拠もない中で仮装隠ぺいとして重加算税を賦課するのは、余りに乱暴なものといわざるを得ないであろう。(中略)安易に仮装隠ぺいとして重加算税を課すことは許されることではなく、このような曖昧な根拠しかない中で、重加算を課すような処分は許されないものといえよう。」と述べている。
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