第28回は、第27回に続きIPOを目指して経営人材を採用する際の注意点の、とくに面接で注意するべき3つの点について解説します。経営人材の採用は重要かつ難易度も高いため、本稿を参考にして、採用の精度を高めていただければ幸いです。
IPOを目指している企業が更に成長するためには、既存メンバーでは難しく、経営人材の力が必要となる時期が来ます。本稿における経営人材の定義は第27回と同様、取締役と執行役員を想定しており、COO、CFO、CTO等のCXOも含めています。
経営人材の採用は何回も経験することではないため、非常に難しく、失敗してしまうことも多いです。加えて、経営人材は面接に長けている方も一定数いますので、その方の本質が見抜けない可能性もあります。だからこそ、面接で注意するべき点を事前に明らかにして、面接の機会を最大限活かす必要があります。以下で、経営人材を採用する際に面接で注意するべきポイントを解説しますので、ぜひ参考にしてください。
1.第一印象と話をする過程で得られる印象を確認にする
事前に職務経歴書や履歴書に添付されている写真で、顔は確認しているはずです。しかし、初めて対面でお会いした際、写真と印象が異なる場合もあります。たとえば、清潔感がなくだらしなく見えてしまう、目を見て話せず自信が無いように見えてしまう等があるでしょう。第一印象はビジネスを推進する上でもとても重要です。第一印象で良い印象を得られれば問題ありませんが、違和感があった場合は、その感覚を大事にしましょう。自身が第一印象で持った感覚を他者も持つ可能性があるためです。
そして、会話が進む中で得られる印象も大事にしましょう。
写真や第一印象は良いが、会話を進めると、印象が変わることがあります。話をする過程で、高圧的な話し方をする、自信が無い話し方をする、会話の中でイライラしだす、明らかに虚偽と思われる話をする、過去に属していた会社の批判や内部情報を話す、他者を批判する発言をする等が挙げられます。このような印象は、自身のみならず他者も同じ印象を持つ可能性があります。したがって、会話をする過程で得られる印象も重視しましょう。
2.成功体験と失敗体験の話を両輪で確認する
経営人材との面接では、経営人材として成功体験を多く有しているはずですので、はじめに、成功体験の話は注意深く確認しましょう。何故、そのような結果を得ることが出来たのか、その結果に対してその方がどのような役割を担ったのか、その時の企業を取り巻く社外の環境や会社内部の環境、経営人材の状況、チームの状況等、成功体験の要因を詳しく確認しましょう。自身の力を誇示される方もいますが、どんなに優秀な方でも一人で出来ることは限られています。一人の力も大事ですが、どう社内・社外の人材を巻き込んで、大きな成果を出されたのか、周囲を巻き込む魅力や胆力があるのかも確認するようにしましょう。
成功体験は特に確認しなくとも、相手から話をしてくるはずですが、ここで注意したいのが失敗体験の話を詳らかに確認することです。失敗体験こそ重要です。何故失敗してしまったのか、成功体験と同様に、その時の企業を取り巻く社外環境や会社内部の環境、経営人材の状況、チームの状況等、失敗体験の要因を詳しく確認しましょう。
面接するうえで大事なことは、失敗から得られたことや、同じ失敗をしないようにどのような点を反省して自身が成長したのかについて確認することです。失敗経験が無い方はいないですし、失敗経験が無いという方は、自身で失敗に気づいていないのか、もしくは挑戦していない可能性もあります。
経営人材は、時には挑戦して失敗し、とても辛く苦しい経験をして、それでも逃げることなく辛抱強く耐えて、最後に成果を出さなければなりません。学歴や過去のキャリアが魅力的な方には、失敗した時に何かしら理由をつけて自身が傷つかないように逃げられる方も一定数ですがいます。そういった方は経営人材として採用してはいけませんので、失敗体験こそ慎重に確認しましょう。
3.自社で成果を出せる理由を確認する
魅力的な学歴、職歴、そして成功体験や失敗経験があったとしても、最も重要なことは経営人材として、自社で成果を出せることです。自社で成果を出してもらうことが可能であるか否か検討するために、成功体験や失敗体験等を確認しているので、過去のことはあくまでも参考程度にしかなりません。過度に過去の情報に囚われてしまうと、良い経営人材を採用する機会を逃してしまいます。例え、過去に大きな失敗をされた方であったとしても、その経験から大きく成長し、成功する可能性が高まっているのであれば問題ありません。
注意しなければならないのが、「事業責任者として●●億円の事業を私がつくり出しました」「今有名な●●という会社は私がIPOを達成しました」といった過去の成功体験です。成功体験の再現性があるのか、慎重に確認しましょう。過去の成果を評価して採用するのではなく、あくまでも自社で成果を出していただくために採用するので、経営人材こそ、成功体験の再現性を重視しましょう。また、大企業とベンチャー企業とでは、置かれている環境が全く異なるため、異なる環境に身をおいても成果が出せるのかを検討することは大事です。
私の経験上、経営人材としてお会いする方には、1社でだけ成果を出されている方が多く、他社では過去のような成果を再現出来ない方が一定数いました。複数社で成果を出されている方は、どのようにすれば成果が出せるのか、そのノウハウを持っていることが多く、自社に参画されても成果を出せる可能性は高いです。しかし、そういった方は非常に貴重であり、そのような方とお会い出来る可能性は低いです。したがって、お会い出来た際は自社に参画していただけるように最大限の誠意を見せましょう。
以上、IPOを目指して経営人材を採用する際、面接で注意すべき3つのことについて解説しました。経営人材の採用で大事なことは、「採用後に、期待された役割で、期待される成果を出し続けて頂くこと」です。今回紹介した3つのことを確認し、面接を通じてその方を見極めましょう。
本記事を参考して、経営者のみならず、採用される経営人材、そして、その方と仕事を共に推進するメンバー、皆が幸せになれるような採用を心がけましょう。
本記事がIPOを目指す経営者の役に立てれば幸いです。
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