5.解説
請求人が何故自動車通勤者にも公共交通機関利用者と同等の通勤定期代を支給していたかについては、おそらく、社員間の待遇の公平さを考慮したものではないかと想像されるが、本件では「(仮定上の)通勤定期代」>「所得税法施行令20条の2②の非課税通勤手当て」という大小関係となり、その差額について、請求人は、所得税法上課税対象として源泉税を徴収していた。ここまでは適正に処理していたものと思われるが、消費税等の処理として、(理由は定かでないものの)仮定通勤定期代の全額を課税仕入れとして処理してしまったものと思われる。
ところで、消費税法基本通達11-2-2は、その本文中には、「その通勤に通常必要であると認められる部分の金額は、課税仕入れに係る支払対価に該当するものとして取り扱う」とのみ定めており、「所得税法上非課税とされている場合」等の文言はないが、『消費税法基本通達逐条解説』には同通達の「解説」で「事業者が支給する通勤手当が所得税法上非課税とされている場合には、その通勤手当は、課税仕入れに該当するものとして取り扱って差し支えないことになる(下線筆者)」[4]との記載がある点が興味深い。審判所は、消費税法の課税仕入れの本来の考え方から、ガソリン代等の実費が所得税非課税とされる金額を上回った場合、あくまでその実費の課税仕入れを認めることとし、反対に、実費が非課税金額を下回った場合であっても、上記通達(逐条解説)の文言を重視し、当該非課税金額まで課税仕入れとして認めるという判断を示したものと解される。
[4] 平成26年版『消費税法基本通達逐条解説』(大蔵財務協会)591頁
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