5.解説

評価通達6(総則6項)は、「(評価通達の)定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する」と定めており、個々の財産の態様に応じた適正な時価評価が行えるような途を拓いている。過去の裁判例[2]では、総則6項が適用されるためには、財産を評価通達によって評価すべきでない「特別な事情」の存在が必要である旨判示している。しかし、「特別な事情」とはいわば不確定概念であるため、総則6項の適用を巡って争いが絶えない。

総則6項の適用を巡る争いには、①納税者が評価通達に従って評価し相続税の申告をしたところ、課税庁側が総則6項を適用して、鑑定評価による再評価を行ったことの適否が争われる事例、反対に、②納税者が評価通達によらず、独自に評価し相続税の申告をしたものを、課税庁側が評価通達によるべきとして否認したことを争う事例の2類型[3]が考えられる。本件は②の類型であるが、そもそも総則6項には、「国税庁長官の指示を受けて評価する」との記載があるので、②の類型が認められるのはかなりハードルが高そうである。

総則6項に係る裁判例を分析した研究[4]では、評価通達によらない特別な事情として認められるものとして、①納税者の租税回避に関するもの、②(バブル期のような)市場の変化に対するもの、③不動産の個別事情によるもの、の3つに分類している。本件では請求人の③の主張に対し、審判所は、請求人の主張が、評価通達を離れて別途評価すべき特別な事情には該当しないと判断したものと解される。


[2] 例えば、東京地判平成4年7月29日(平成2年(行ウ)第184号)税資第192号180頁

[3]横井里保『相続財産の時価評価と評価通達によらない特別な事情の存否』税務弘報2021年6月号162頁を参考とした。

[4]小池幸造監修=風岡範哉著『相続税・贈与税 通達によらない評価の事例研究』(現代図書、2008年)参照。


バナーをクリックすると㈱レックスアドバイザーズ(KaikeiZine運営会社)のサイトに飛びます

最新記事はKaikeiZine公式SNSで随時お知らせします。

 

◆KaikeiZineメルマガのご購読(無料)はこちらから!
おすすめ記事やセミナー情報などお届けします

メルマガを購読する


 

(関連記事)

第1回  相続で取得した上場株式の取得費の判断~1~

第2回 相続で取得した上場株式の取得費の判断~2~

第3回 重加算税の判断ポイント 従業員の「隠ぺい・仮装」行為が法人と同一視できないとされた事例

第4回 不動産貸付とは「対象物件の供与から返還までを一連の業務」と認定した事例

第5回 非居住者が、国内の金融商品取引業者を通じて行ったFX取引から生じた所得について、国内源泉所得に当たるとされた事例【所得税】

第6回 過年度の申告において売上原価から除外した材料仕入れについて、後続年度において分割計上したことは、国税通則法68条1項に規定する「隠ぺい又は仮装」に該当するとされた事例【法人税】

第7回 個別対応方式を選択した調剤薬局の課税仕入れについて、共通売上対応分に区分して控除対象仕入税額を計算すべきとする更正の請求を認めた事例【消費税・一部取消し】

第8回 外国子会社配当益金不算入制度 外国子会社の判断は「株式の数」

第9回 【全部取消し】相続税 共同相続人のあん分方法は端数調整を行わない 元国税審判官が解説 公表裁決から学ぶ税務判断のポイント

第10回 所得税・消費税で納税者に軍配  過少申告の意図は認められるが重加算税ではない

第11回 カフェテリアプランの更正処分が全部取消しとされた【所得税】

第12回 審判所 贈与契約書に記載されても真の贈与者と認めず

第13回 漢方薬の購入費用は医療費控除の対象外【所得税/請求棄却】

第14回 更正請求 後出しジャンケン的に新たな事由の追加は許されない!?【所得税等/請求棄却】

第15回 請求人の仕入計上額が過大であるという原処分庁の主張が否認された事例【法人税等/全部・一部取消し】

第16回 判決が確定した年分に賠償金等の収入計上をすべきとされた事例【所得税等・消費税等/請求棄却・一部取消し】

第17回 列車走行による騒音で利用価値が著しく低下している土地と認定された事例【相続税/全部取消し】

第18回 「住宅ローン控除」の適用を認めず 仲介手数料のみでは消費税負担のない取得と判断【所得税/請求棄却】

第19回 設立2期目の法人の消費税の納税義務が免除されないとされた事例【消費税/請求棄却】

第20回 国際郵便による輸出について輸出免税規定の適用が否認された事例【消費税/請求棄却】

第21回 フリーレント期間のある契約期間内で平準化した賃料を損金算入することは認められないとした事例【法人税・消費税/請求棄却】

第22回 譲渡代金の収益計上時期につき納税者の主張が認められた事例【法人税・消費税/全部取消し】

第23回 譲渡所得の計算上、取得費に加算される相続税額の計算に誤りがあるとされた事例【所得税/一部取消し】

第24回 米アマゾン社への支払手数料の仕入税額控除が否認された事例【消費税/請求棄却】

第25回 非課税限度額を超える通勤手当は課税仕入れに該当しないとされた事例【消費税/請求棄却】