立法による少額省略

この点については議論のあるところですが、私見としては重要性の原則は法人税法の基準とはなり得ないと解すべきであると考えています。なぜなら、法人税法は適正な課税を目的とするものであって、具体的な課税標準及び税額の金額の計算のうち、「この点については重要でないから省略する」とか「この点については重要だから計算に織り込む」といった、抽象的な基準で税額計算が左右されるべきではないと考えるからです。

もっとも、立法により重要性の乏しいものを計算から除外するというルールを設けることは、立法裁量権として国会に認められていますから、そのような規定を設けることは可能ですし、それを否定するものではありません。しかし、解釈論において重要性の原則を適用することには消極的であるべきでしょう。

そもそも、国税通則法は少額な納税額の徴求を立法上排除する姿勢をみせており、例えば同法119条《国税の確定金額の端数計算等》は100円未満の端数切捨てを定めていますし、また同法118条《国税の課税標準の端数計算等》は1千円未満の課税標準の金額を省略する仕組みを設けているのです。かような立法的措置を通じて、はじめて重要性の乏しい少額省略が認められているのですから、納税者の解釈によって「少額だから省く」といったことは認められないと考えるべきでしょう。したがって、殊更に重要性の有無を解釈論に持ち込むことには賛成できないというのが私見の趣旨です。

さて、この1千円未満の課税標準の計算排除というのは、例えば999円であっても0円として処理するものです。これは、先に記した天気予報の降水確率と一緒ではないかと思われる方もいらっしゃるでしょう。

もっとも、天気予報と国税通則法上の取扱いが違うのは、天気予報で「0mm」と表示されるのは、0.9mmまでは雨が降るという「雨天」の予報であるのに対して、国税通則法の場合は、999円までの課税標準や99円までの税額については、納税義務自体がないことになるのであって、天気予報でいえば「晴天」扱いになるということですね。


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